シックハウス症候群
シックハウス症候群とは、住居内の空気汚染による様々な健康障害の総称です。新築やリフォーム後の住居でよく起こったことからこの呼び名が定着しました。
シックハウス症候群は発症のメカニズムなど未解明な部分も多く、原因も症状も多種多様です。症状としては倦怠感・めまい・頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患などがあります。
□シックハウス症候群の原因
シックハウス症候群は何らか理由で室内の空気が汚染され、その空気を居住者が吸引することによって発生するとされています。
シックハウス症候群は室内の空気が化学物質などに汚染されやすい状況になったことで急速に広まったとみられています。
シックハウス症候群の主な原因としては以下のものが挙げられます。
・換気不足…住宅の高気密化・高断熱化が先に進み、換気対策が遅れたため、室内空気汚染の原因となったとも言われています。
・化学物質…化学物質を含有した新建材、壁紙、接着剤、合板、塗料から揮発しています。またカーペットやカーテン、家具などにも接着剤、難燃剤、防虫剤などの化学物質が用いられており、ここからも揮発しているようです。
・日常生活用品…化粧品、タバコ、スプレー類、防虫剤、暖房器具などから発生する化学物質も原因となるようです。
・ダニ・カビ…結露を起こしやすい住宅の場合、ダニやカビが発生しやすく、こちらもシックハウス症候群の一因になってきます。
・体質の変化…シックハウス症候群は化学物質過敏症とは同一の概念ではありませんが、もともとアレルギー体質であったり、化学物質に過敏な体質であったりすることも症状が引き起こされる原因の一つになるようです。またストレスなどの負荷も引き金の一つになるのではと考えられているようです。
□シックハウス症候群の原因物質
シックハウス症候群はホルムアルデヒドなどの有機溶剤や、木材をシロアリなどから守るための防腐剤から発生する揮発性有機化合物(VOC)が主な原因物質とされています。またその他にもカビやダニ、微生物も原因物質となり得ると言われています。
日本の厚生労働省はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、クロルピリホス、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、 フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、フェノブカルブの13種類の揮発性有機化合物について、人体に対する影響を考慮した濃度指針値を示しており、総揮発性有機化合物(TVOC)についても暫定目標値とする濃度が定められています。
また海外ではEU報告書で69種類、ドイツ建材基準で166種類、フランス環境労働衛生安全庁で216種類の室内空気最小濃度値が定められています。
□シックハウス症候群の原因となる有機溶剤
塗料もシックハウス症候群の原因として挙げられていますが、まず塗料の主成分として代表的なものとしては溶剤、希釈剤、顔料、合成樹脂、展色剤、蒸発抑制剤、乾燥剤などがあります(塗料の種類により入っていないものもあります)。またこの他に可塑剤、増粘剤、硬化剤が入っていることもあります。
これらの成分の中で、特にシックハウス症候群の原因物質として問題になるものが溶剤になります。
塗料に使われる有機溶剤の中で特に多いのは揮発性有機化合物の一種であるトルエン、キシレンであり、シックハウス症候群の原因となりやすい化学物質になっています。
しかしその一方で、これらの有機溶剤は完全に乾燥してから一定期間が経過すれば放散量が劇的に下がるという特徴をもっているため、特に新築やリフォーム後は換気を十分に行うことでシックハウス症候群のリスクを下げることができるとも言えそうです。
□対策
シックハウス症候群の対策としては、まずは充分な換気を行い、それと合わせてなるべくVOC放散量の低い建材や塗料を用いることが効果的と言えます。
外装塗料の場合、内装に比べてシックハウス症候群のリスクは比較的低いと思われますが、気になる場合には有機溶剤の含有量が比較的少ない水性塗料の使用や、揮発性有機化合物(VOC)を吸着するなど空気清浄効果もあるとされる無機質の漆喰壁、珪藻土などの導入も視野に入れるとより安心でしょう。