中性化(ちゅうせいか)
□中性化(ちゅうせいか)とは
中性化とは鉄筋コンクリートの劣化の1つで、二酸化炭素によって生じます。
コンクリートは主成分がセメントであることから内部は本来アルカリ性ですが、外部から二酸化炭素(炭酸ガス)が侵入すると中性になり、構造物に様々な劣化が生じます。
日本コンクリート工学協会 炭酸化研究委員会報告書(1993年)では以下のように定義されています。
・中性化…セメント硬化体のアルカリ性が低下する現象
・炭酸化…セメントの水和生成物が二酸化炭素と反応し、炭酸化合物およびその他の物質に分解する現象
□コンクリートの中性化
大気中の二酸化炭素(CO2)がコンクリート内に侵入し、炭酸化反応を引き起こすことにより、本来アルカリ性である細孔溶液のphを下げ、コンクリートの中性化が起こります。
①中性化はコンクリート表面から徐々に進行
②中性化が鉄筋などの鋼材部分にまで達すると不動体被膜を破壊し、鉄筋に錆が生じます
③鉄筋の錆が進行して腐食生成物が堆積すると鉄筋が膨張します
④膨張がコンクリートに伝わることでクラック(ひび割れ)や剥離が生じ、コンクリート構造物の耐久性などが低下します
⑤クラックが発生したコンクリートは更に二酸化炭素(CO2)の侵入を促すことになり、中性化によるコンクリート構造物の劣化や、雨水の浸入による鉄筋の腐食を加速させます
中性化してもコンクリート自体の強度が低下するわけではなく、コンクリート内部の鉄筋に腐食が起きることで構造物の劣化が起こります。
一般的に湿潤状態より乾燥状態で中性化の進行が早くなります。
□コンクリートの中性化を予防
コンクリートの中性化予防対策としては、中性化速度を遅らせることに重点が置かれます。
以下のものは中性化予防に効果的ですがその分コストも増すため、立地や求める耐用年数などに応じて適切に選定します。
・水セメント比の小さい密実なコンクリートを用いて二酸化炭素の侵入を抑える
・養生期間を長く取り、コンクリート表面の乾燥を防ぐ
・かぶりを大きく取る
・コンクリート表面の塗装を行う
□中性化の定期点検
中性化の点検は外観検査が基本となりますが、中性化がある程度進行するまでは一般的に外観に変化は見られません。
そのためコア採取・はつり試験による中性化深さ試験、電気化学的手法による鋼材の腐食傾向・速度試験などの検査方法も用いられています。
定期点検により中性化の進行度合いや今後の中性化の進行を予測し、求める耐用年数と照らし合わせて補強や補修などの対策を行います。
□コンクリート構造物の補修方法
・表面被覆工法…中性化の進行を遅らせるためにコンクリート表面に被覆を行います。
・断面修復工法…中性化したコンクリートを除去し、腐食した鉄筋の防錆処理を行い修復します。
・再アルカリ化工法…コンクリートに約1A/m2の電流を1週間ほど流し、中性化したコンクリートを直接再アルカリ化します。
その他、鋼板やFRPの接着工法、部材厚の増厚や巻き立て工法、外ケーブルによりプレストレスを与える工法などがあります。